昔の部下。そしてちょっとだけ付き合っていたブドウさん。
二股の末にあっさり振られてから、一切連絡をとっていなかったのだが。
そんなブドウさんからいきなり届いたメール。

「ＬＩＮＥＩＤ変えたでしょ」
「元気ですか」

彼女とは一緒に仕事をしていた期間も長い。
こっぴどく振られたとはいえ、さすがにもう4年以上も前の話だ。
単純に懐かしさが勝った私。

「おー久しぶり」
「そっちこそ元気か」

そんなやりとりからお互いの近況報告を。
ブドウさんは第一子にも恵まれ、もう2歳になるという。
可愛らしい女の子の写真が送られてきたものだ。

幸せいっぱい。素晴らしいことじゃないか。
今度ご飯でも行きませんか。そんなやりとりも社交辞令だと思って適当に相槌を打っていたのだが。

「今週末は空いてる？」

やけに具体的なお誘いが届く。
うーん、今週は無理だなぁ。来週なら。
日曜日のお昼だったら時間取れるよ。
そう返すと、すぐにランチの予定が決まったのだった。

改めてブドウさんにＩＤを伝えると、そこから毎日ＬＩＮＥが届くようになる。
まるでメロンさんと競い合うように、一日に何度も。
いや、私がＬＩＮＥ苦手なの知ってるだろ。
そう文句を言うも「返事は時間のとれる時だけでいいから」と取り合わないブドウさん…

その時は本当に何も考えていなかった。
まさか不倫のお誘いを受けるとは、夢にも思わない私。
そしてランチ当日。
のこのこと待ち合わせ場所に向かうと、あの頃と変わらない笑顔でブドウさんが立っていた。
相変わらず可愛いな。私は呑気にそう思ったのである。