ブドウさん④まだ好きだよ
「旦那とは別れようと思ってる」
気持ちの良いお天気の日曜日。
そんな昼下がりに聞かされる台詞としては0点だよね。
結婚生活5年目。まぁそんなこともあるんじゃない。
この時点ではまだまだ適当に聞いていた私だったのだが…
「今日は仕事で旦那帰ってこないの」
「子供も明日まで親に預けてきたし」
「これからタカシさんの家に行こうよ」
「夕飯作ってあげる、どうせ碌なモノ食べてないんでしょ」
いやいや、何を言い出すんだお前は…。
冗談とも本気とも分からず、少し動揺する私。
「私だって彼女くらい居るっつーの」
そう答えるとブドウさんからまさかの返答が。
「そっか、じゃあ家に来る?」
だから。なんでそーなるんだよ。
完全にからかわれているものだと思い、笑いながら話をしていたのだが…
どうやらブドウさんは本気みたいだ。
「今夜はタカシさんの好きなハンバーグにしよう」
などと一人で盛り上がっている。
さすがにそれは無理だよ。そう告げると途端に雲行きが怪しくなっていく。
意味不明の押し問答の末に、ブドウさんはこう言ったのであった。
「お願い、今夜だけでもいいから一緒に居て」
「私、まだタカシさんのこと好きだよ」