キャバクラやクラブ、パブなど。
いわゆる女性の居る飲み屋が、私は大の苦手である。
お金を払った上で、相手を楽しませてあげないといけない。とにかく疲れる場所。
そんなイメージだからだ。
仕事の一環として割り切れば、致し方ないとは思うものの。
一人で出掛ける人の気が知れないな。
正直そう思ってしまっている。

出張の多い私は、そんなお店に連れていかれる機会も少なくないが。
取引先の行きつけなので、楽しそうな振りもしなければならない。
それが苦痛に拍車をかけることになる。
加えて、ホステスさんからの営業メールにも心底辟易させられるものだ。
色恋営業も、もちろん彼女たちの仕事。
それは分かっているのだが…
お願いだから連絡してこないで欲しいよね。

「昨夜はお疲れ様でした」
「二日酔いは大丈夫でしたか？」

そんな私だったので、翌日にリンゴさんから届いたＬＩＮＥも当然のように無視していたのだった。

リンゴさんの存在など完全に忘れていたある日。
同じ案件で再び大阪へ向かい、またまた同じパブでの宴会と相成ることに。
相変わらず酷い盛り上がり方である…
（正直ついていけないな。）
そう思った私は、輪の中心から距離をとっていると。

「お久しぶりです」

そんな声を掛けながらリンゴさんが隣にやってくる。

「あー、その節はお世話になりました」

そう冗談めかして返す私。
改めてゆっくり眺めてみたリンゴさんは、桜井幸子さん似のとても可愛らしい女性。
どこか影のある感じ。
幸が薄そうな美人さん。なんて言うと失礼だが、たしかにそんな印象の彼女であった。

『いつかまた逢える』

福山雅治さん主演のＴＶドラマで、当時結構ハマっていた私。
その頃から桜井幸子さんは好きな女優さんだったなぁ。
そんなどうでもいいことを考えていると。

「おっ、そこの二人いい感じじゃないですか」

そんなチャチャチャが飛んでくる。
いやいや、中学生じゃないんだから…
もう帰りたいなー。心底そう思って苦笑いを浮かべる私。
すると彼女がこう返したものだ。

「ふふ、こんな素敵な男性とじゃ釣り合わないですよ」
「私、子持ちのお母さんなんですから」