バナナさん⑦彼女との初旅行
「いつか温泉旅行でも行きたいな」
バナナさんから、そんな台詞が出た時のことである。
『明日やろうは馬鹿野郎だ』
仕事をする上で、このフレーズがとても好きな私。
思い立ったが吉日っていうよね。
そんな勢いで「今週末にでも行こうか」そう返してみると。
「えー、行きたい行きたい」
「でも急過ぎないかなぁ?」
いつもは時間を空けて返ってくるLINEの返信。
でもこの時はすぐに返事があったものだ。
こういう何気ないバランス感覚も、バナナさんに惹かれる大きな理由の一つかもしれない。
そんな風に思いながら、「良さそうなところを探してみるね」そう返す私。
早速、宿泊先を探してみることにしたのだった。
バナナさんとの初旅行だし、勝手知ったる旅館がいいかな。
そう思って検索してみるのだが、さすがに今週末とあってはおススメの旅館はどこも満室。
空いているのは「客室に露天風呂が付いていない」ところばかりだ…
彼女と温泉に行くのに、露天風呂付きの客室じゃなきゃ楽しさ半減だよね…
困ったなぁと、色々探していると。
「あれ、ココいいんじゃね!?」
そう思える旅館がヒットする。
これまで行ったことが無いので一抹の不安はあるし、値段も若干高めだが。
うん、初旅行だし。少しくらい奮発してもいいだろう。
「良さそうなところ見つかったよー」
そうバナナさんにLINEを送ると。
「ありがとうー♪」
「あっ、お幾らかしら?」
そんな返信が返ってくる。
一瞬???となる私。
すぐに気付いて「旅行代なんて気にしなくてイイよ」と送る。
私が勝手に探した宿で、彼女にお金を出してもらうわけにはいかない。
それが私の常識だったが、どうやらバナナさんは違うようだ。
「それはダメだよー」
そう食い下がる彼女を何とか説き伏せると、こうしてバナナさんとの初旅行が決まったのである。
彼女との温泉旅行にテンションの上がる私。
まさかこれが(不穏な空気に包まれる)最悪な旅行になろうとは。
この時はまだ想像だにしていなかった…